愛のコリーダ

「切ってやる!家へ帰っても出来ないように、切ってやる!
・・・これ切ったら、吉さん、死んじゃうかね?」
「死んじゃうだろなぁ」
「死んじゃいやだ!」

その昔、満員の文芸座で見た。両隣に若い女性が座ったので、生唾を飲み込む音を聞かれやしないかとびくびくしたことを思い出す。でも、いつしか画面に引き込まれた。
それほど、いやらしいとは思わなかった。ある種観念の領域に足を踏み入れた究極の恋愛劇として、心揺さぶられた。

【 愛のコリーダ 】
大島渚監督作品 1976年・日仏

いまや死語だろうハードコア・ポルノの話題作。
昭和11年、男を独占したいあまりに殺害し、その局部を切断した阿部定事件の映画化。

愛のコリーダどことなく映画の内容を暗示しているかのような、撮影にまつわるエピソードも面白い。
主演女優は、新人、松田英子がカメラテストでなんのためらいもなく全裸になって走ったことから、すんなり決まった。
しかし、本番を演じるとあって、男優選びは難航した。
「大島さんが見ている前で立つわけがありません」
「あのときは人並みなんですが、普段のときが人より小さいんです」
どんな俳優に白羽の矢が立ったのかは知らないが、誰もがそんな言い訳がましい理由で辞退した。荒木一郎は「一人の女に一ヶ月も興味を持てません」と断った。そんな中で、藤竜也ただ一人だけが悠然と受け入れた。
そして、映画もまた、藤竜也の存在感と演技が圧倒的なのだ。

女の欲望をすべて受け入れるという、およそありえない男の肖像。吉蔵については資料がなかったので、大島がすべて自分で創作したという。それが藤竜也のエロスによって生々しい現実感を帯び、あらまほしい男の鮮血がほとばしる。
そして、戸田重昌の赤い美術と響き合う。

戦争の時代に背を向けて、密室の愛欲にただひたすら逃避する総体としてのエロティシズム。
ゆえに、死に至る病。

「あんた、首締めていいか。気持ちいいんだろ」
「ああ、いいよ」

脚本:大島渚 撮影: 伊東英男 音楽:三木稔
共演:中島葵、殿山泰司、芹明香
共犯:若松孝二! 崔洋一!!

松田英子さんはいま、何をやっているんだろう。

いまだ知らぬ完全ノーカット版が、無性に見たくなった。

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posted by ken | Comment (3) | TrackBack (1) | 官能
この記事へのコメント
はじめしまして。
映画生活のトラックバックよりお邪魔致しました。突然恐縮ですが、トラックバックさせていただきます。

ブログを拝見いたしましたが、大変興味深く内容の濃いものだと感激いたしました。

また、遊びに来させていただきます。
宜しくお願い致します。
Posted by 髭ダルマLOVE at 2007年02月25日 02:09
ご丁寧にコメントを下さり、ありがとうございました。今後とも、宜しくお願い致します。
Posted by 髭ダルマLOVE at 2007年02月25日 16:42
髭ダルマLOVEさん、最近、更新が滞ってますが、また頑張って書きますので、こちらこそよろしくです。
Posted by ken at 2007年03月03日 22:35
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Excerpt: 愛のコリーダおすすめ度:{/star/}{/star/}{/star/}{/star/}制作:1976年 日本 フランス製作:若松孝二・アナトール・ドーマン 監督・脚本:大島渚 出演:藤竜也 松田英子...
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Tracked: 2007-02-25 02:10