黄金の腕

今ではあまり話題に上らないが、渋いフィルムを二本。
まずは、マッカーシズム絡みで、米政界の内幕を描いた映画「野望の系列」。

【 Advice and Consent 】
監督・製作:オットー・プレミンジャー (1961年・米)
原作:アレン・ドルーリー 脚本:ウェンデル・メイズ 
撮影:サム・リーヴィット 音楽:ジェリー・フィールディング 
タイトルデザイン:ソウル・バス 
出演:ヘンリー・フォンダ、チャールズ・ロートン、ウォルター・ピジョン、ドン・マレイ、ピーター・ローフォード、バージェス・メレディス、ジーン・ティアニー、リュー・エアーズ、ポール・フォード、フランチョット・トーン

大統領(トーン)が新国務長官にレフィングウェル(フォンダ)を指名する。自身が敷いた外交路線の継承者として手腕を高く評価していたからだ。

野望の系列大統領の腹心、院内総務のマンソン(ピジョン)はレフィングウェルの可否を諮る上院委員会長に、公正を期してアンダーソン(マレイ)を任命する。もとより勝算はあった。しかし、党内きってのタカ派で鳴るクーリー(ロートン)がレフィングウェルに私怨を抱いていた。強硬な反対論を唱える。レフィングウェルがかつてコミュニズムに関わっていたという疑惑を立てる。レフィングウェルは平和主義者だ。疑惑の打消しにも成功したかに見えた。偽証だった。党員でこそなかったが、一時関与していた。偽証はかつての同士に累が及ぶのを恐れてのことだった。クーリーはその事実を掴み、アンダーソンに告げる。正義の士であるアンダーソンは偽証の罪を重視し、大統領に指名の撤回を求めて一歩も後に引かない。

そんなアンダーソンに圧力の手が伸びる。同性愛の過去をネタにした脅迫だった。党内最左派の議員の策略であることが暗示される。アンダーソンは自殺する。

民主主義は米国が建国の理念として高らかに掲げる旗印だ。しかし、その実態はおよそきれいごとばかりでは済まない。政敵の失墜を狙って、私行を暴くような卑劣な手口が横行する。オットー・プレミンジャー監督はそんな米政治の暗部を冷徹に描く。話の展開も予断を許さず、見応え十分だ。

権力の甘い蜜の香りを嗅いで、人はヒューマニストでいられるか?

こちらは初めて麻薬中毒を扱った映画だと言う。物議を醸したと聞く。禁断症状に苦しむ場面のフランク・シナトラの好演も与って、なるほど迫真力に富む。

【 The Man with the Golden Arm 】
監督・製作:オットー・プレミンジャー (1955・米)
原作:ネルソン・アルグレン 脚本:ウォルター・ニューマン、ルウィム・メルツァ
撮影:サム・リーヴィット エルマー・バーンスタイン  
出演:フランク・シナトラ、キム・ノヴァク、エレノア・パーカー、 シェリー・マン、ロバート・ストラウス、ダーレン・マクギャヴィン 

キム・ノヴァク博打仲間から「黄金の腕を持つ男」と称されるカード配りの名人(シナトラ)。麻薬中毒の治療を終え、ジャズドラマーとして堅気の生活を送ろうとするが、妻や仲間はそれを許さず、再び麻薬に溺れ始める。

身障者を装う腹黒い妻を「探偵物語」「黒い絨毯」のエレノア・パーカーが演じ、「めまい」「ピクニック」のキム・ノヴァクがシナトラを助ける心優しい酒場女を演じる。ノヴァクがいい!山田宏一氏は書いている。「ヤクが切れ禁断症状に陥ってガタガタ震えるシナトラを頑是ない子供を抱きしめるようにノヴァクが胸に優しく抱きかかえてやった時の、あのふくよかに脈打つ胸の感触、肉のやわらかさ、肌のぬくもり」

エレノア・パーカー幕切れが劇的だ。別れを告げて立ち去ろうとするシナトラを、妻は思わず車椅子から立ち上がって追ってしまう。戸口には警察官が立っていた。嘘がばれる。彼女は寂しさを紛らわすためにと隣人から貰った笛を吹きながら、階段から身を投げる。駆け寄ったシナトラに虫の息で呟く。「愛していたから・・・」

フィルム・ノワール調のモノクロ映像と、映画音楽として初めて本格的に使われたモダン・ジャズ(シェリー・マン、ショーティ・ロジャーズのウエスト・コースト・ジャズだとか)。そしてソウル・バスのタイトルデザイン。都会的感覚が横溢する捨てがたい一品だ。

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posted by ken | Comment (0) | TrackBack (0) | 人生
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